高齢者が虫歯になりやすい部位は?
2023.4.25
高齢者の口腔内は若年者の健常な口腔内と比較すると、歯肉が痩せて歯根の露出が多くなる傾向にあります。歯根が露出すると、今まで虫歯が少なかった人でも、歯根面に虫歯が発生することがあります。これを根面う蝕といいます(図1)。
根面う蝕になりやすいのは、歯冠部と歯根部で歯の質が違うからです。
歯冠部の表面はエナメル質と呼ばれる非常に硬い無機質で覆われていて、その内側に象牙質があります。しかし歯根部にはエナメル質がなく、象牙質がむき出しの状態になっています。
虫歯は歯に付着した歯垢(プラーク)の中の細菌が酸を放出して歯を溶かすことで引き起こされますが、象牙質はエナメル質よりも酸に対する抵抗力が低いため象牙質のみの歯根面は虫歯の危険度が高くなります。
また高齢になると唾液の分泌量が少なくなり口腔内の洗浄や酸を中和する作用が低下するため、これも根面う蝕を誘発する原因となります。
根面う蝕を予防するためにご家庭でできることは、まず歯根面の清掃性を高めることです。特に歯間部の根面に虫歯が発生しやすいので、歯間ブラシ(図2)で清掃することをお勧めします。また酸に対する抵抗力を高めるためにフッ素入り歯磨剤を使用することで歯質を強化するのも効果的です。唾液量の少ない人に対しては砂糖を含まないキシリトールガムで唾液の分泌を促すのもよいでしょう。また医院においても歯質を強化する予防処置がありますので、かかりつけの先生に相談してみましょう。
図1
高齢者になって歯肉がやせてくると歯根が露出して根面う蝕になりやすい
図2
歯ブラシが届かない歯間部を清掃する歯間ブラシ

森田 誠(もりた まこと) 山手通り歯科 院長
東北大学卒業後、仙台市内の歯科医院に勤務。その後、新宿区の元日本接着歯学会副会長が在籍する歯科医院で8年間勤務。その間、鶴見大学歯学部歯科補綴学第二講座に所属し学位(歯学博士)を取得。
日本歯科審美学会、日本顎咬合学会、日本補綴歯科学会、日本接着歯科学会、日本歯科保存学会に所属し、なるべく歯を残し、美しさを追求することに精進する。その結果、数多くの著書を手掛け、長きの臨床と研究により接着性・審美性に優れた「接着修復治療」を実践。現在、中目黒で開業し日々精度の高い治療を行っている。
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