酸蝕症ってどんな病気?
2022.8.23
酸蝕症とは、口の外から入ってくる酸、あるいは胃酸によって歯が溶かされる現象をいいます。虫歯も酸によって歯が溶ける病気ですが、口腔内の虫歯菌が産出する酸が原因なので酸蝕症とは区別しています。
歯は酸によって表面が一時的に溶かされても(脱灰)、唾液に含まれるミネラル(リン酸イオン、カルシウムイオン)によって歯を修復(再石灰化)しますが、酸蝕症は歯の再石灰化が酸による脱灰に追い付かない場合に発生します。
主な原因は、
①習慣的な胃酸の逆流
摂食障害による嘔吐や逆流性食道炎など
②酸性食品の過剰摂取
レモン、オレンジなどの柑橘系果物
清涼飲料水、ワインや酢などの酸性飲料
③職業的原因
メッキ工場など酸を取り扱う職場では揮発した酸によって歯が溶ける場合があります。
酸蝕症の予防方法は、
・病気による胃酸の逆流の場合は、その病気を治す。
・酸性食品の過剰摂取を控える
・酸による歯の脱灰を予防するため、フッ素による歯質の強化、リン酸カルシウムなどの再石灰化成分が含まれているリカルデントガムやポスカムなどで再石灰化を促進する(2022年7月コラム参照)。
図1は逆流性食道炎の方の口腔内で、歯が強くしみるとのことで来院されました。見ると表面にあったエナメル質が大きく溶けてなくなり、知覚のある内部の象牙質が大きく露出しています。
ここまで大きく歯が溶けてしまった場合は、セラミッククラウンやコンポジットレジンなどの充填材で象牙質をカバーしなければ症状を改善させるのは難しいと考えられます。
図1 逆流性食道炎による酸蝕症.

森田 誠(もりた まこと) 山手通り歯科 院長
東北大学卒業後、仙台市内の歯科医院に勤務。その後、新宿区の元日本接着歯学会副会長が在籍する歯科医院で8年間勤務。その間、鶴見大学歯学部歯科補綴学第二講座に所属し学位(歯学博士)を取得。
日本歯科審美学会、日本顎咬合学会、日本補綴歯科学会、日本接着歯科学会、日本歯科保存学会に所属し、なるべく歯を残し、美しさを追求することに精進する。その結果、数多くの著書を手掛け、長きの臨床と研究により接着性・審美性に優れた「接着修復治療」を実践。現在、中目黒で開業し日々精度の高い治療を行っている。
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