部分入れ歯をつけっぱなしにするとどうなる?
2020.6.26
部分入れ歯を装着している方は口腔内の衛生状態を保つため、食後には入れ歯を洗浄し残存歯をきちんと磨くことが重要です。部分入れ歯は形状が複雑で、特に維持装置(鉤)がかかっている歯(鉤歯)には歯垢が停滞しやすく、清掃を怠ると簡単に虫歯や歯周病を進行させてしまいます。また衛生面のほかに鉤歯への負担を軽減させるためにも就寝時は入れ歯をはずしておいた方がよいでしょう。大きな入れ歯の場合は乾燥させると変形することがあるので、清掃後、水または入れ歯洗浄剤に漬けて保管して下さい。
入れ歯を使用される人の多くはご高齢です。特に要介護の方はご自身での歯みがきが困難ですので、できるだけ周囲の方が入れ歯の洗浄や歯みがきを手伝ってあげたほうがいいです。
図1は要介護の患者様の口腔内ですが、部分入れ歯を2日に1回はずして洗浄するのみで歯みがきがほとんどできておらず、部分入れ歯を作ってわずか半年で入れ歯の維持装置(鉤)をかけている歯(鉤歯)が虫歯になり折れてしまった症例です。鉤歯がなくなれば入れ歯が動き易くなり食事ができません。また通院が困難にもかかわらず、治療日数をかけて入れ歯を作り直さなくてはなりません。
病気やご高齢で体力が減退している方は、口腔内の不衛生な状態が続くとお口の中にカビが生えたり(カンジダ症:2019年8月コラム)、誤嚥性肺炎を引き起こしたりします。口腔衛生状態を改善させることは決して歯だけの問題ではありません。
図1 部分入れ歯を長期間装着したまま歯みがきを怠ったため半年で虫歯になった症例

森田 誠(もりた まこと) 山手通り歯科 院長
東北大学卒業後、仙台市内の歯科医院に勤務。その後、新宿区の元日本接着歯学会副会長が在籍する歯科医院で8年間勤務。その間、鶴見大学歯学部歯科補綴学第二講座に所属し学位(歯学博士)を取得。
日本歯科審美学会、日本顎咬合学会、日本補綴歯科学会、日本接着歯科学会、日本歯科保存学会に所属し、なるべく歯を残し、美しさを追求することに精進する。その結果、数多くの著書を手掛け、長きの臨床と研究により接着性・審美性に優れた「接着修復治療」を実践。現在、中目黒で開業し日々精度の高い治療を行っている。
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