永久歯の前歯の間が離れて生えてきても大丈夫?
2012.3.16
上の前歯が乳歯から永久歯に萌出交換する時、図1のように最初は永久中切歯の間に隙間が開いた状態で生えてくることがよくあります。これを見て多くの親御さんは、すきっ歯の状態で生えてきたと心配されます。しかしこれは前歯の生えかわりの時期によく見られる現象ですので心配いりません。この時期は見た目の悪さからUgly duckling stage(醜いアヒルの子の時期)といわれています。この中切歯間の隙間は、隣の側切歯や犬歯が生えてくるとそれに押されて自然と閉じてきます(図2、3)。この時期は小学校の低学年から高学年くらいまで続きますので、すぐに隙間が閉じなくても問題ありません。
もし前歯6本が生え揃っても中切歯間が大きく離開しているときは、別の原因が考えられます。
一つは、稀に中切歯歯根部の歯槽骨内に過剰歯が埋入していることがあり(正中埋伏過剰歯)、これが中切歯の移動を妨げることがあります。この場合は過剰歯の抜歯が必要です。
もう一つは、上唇小帯という上唇から歯肉に伸びているヒダがありますが、この小帯が歯と歯の間にまで伸びていると中切歯間が離開しやすくなります(上唇小帯高位付着)(図4)。この場合は上唇小帯を一部切除する手術が必要です。
また歯列不正や咬み合わせが原因で中切歯間が離開することもありますので、改善がみられない場合は歯科医院を受診して調べてみてください。
図1. 永久中切歯の生え始めの時期、中切歯間に隙間が開いている(6歳9か月)。隣在歯は乳歯。
図2. 側切歯が生えてきて中切歯間の隙間が小さくなってきた(8歳5か月)。
図3. 側切歯が完全に萌出し中切歯間の隙間が閉じた(9歳5か月)。犬歯が萌出するまで閉じな い場合もあります。
図4. 上唇小帯高位付着.上唇からのヒダが 中切歯間まで伸びでいる。

森田 誠(もりた まこと) 山手通り歯科 院長
東北大学卒業後、仙台市内の歯科医院に勤務。その後、新宿区の元日本接着歯学会副会長が在籍する歯科医院で8年間勤務。その間、鶴見大学歯学部歯科補綴学第二講座に所属し学位(歯学博士)を取得。
日本歯科審美学会、日本顎咬合学会、日本補綴歯科学会、日本接着歯科学会、日本歯科保存学会に所属し、なるべく歯を残し、美しさを追求することに精進する。その結果、数多くの著書を手掛け、長きの臨床と研究により接着性・審美性に優れた「接着修復治療」を実践。現在、中目黒で開業し日々精度の高い治療を行っている。
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