歯科金属が原因のアレルギーをご存知ですか?

歯科金属が原因のアレルギーをご存知ですか?

コラム

2020.10.27

金属アレルギーといえば、アクセサリーなどの金属と直接触れている皮膚に炎症を引き起こす状態を思い浮かべるかも知れませんが、金属に直接触れていない他の部位にも症状が現れることもあります。金属アレルギーは金属そのものがアレルギーを引き起こすのではなくイオン化して血中に入り込み体内のタンパク質と結合してアレルギー反応を引き起こします。
歯科においては特に保険診療で金属を使用することが頻繁にありますが、口腔内では唾液によって金属がイオン化しやすい状態でありリスクが高いと言えます。ただし歯科金属によるアレルギーは使用してから何十年も経過してから突然発症することも多く、すぐに症状が現れるとは限りません。

歯科金属アレルギーで起きる症状の例としては、手のひら(手掌)や足の裏(足蹠)に膿をもった小さな水ぶくれ(膿疱)が次々とできる慢性疾患がありこれを掌蹠膿疱症といいます(図1)。これはしばらくすると皮がむけてかさぶた(痂皮)になり、また膿疱ができるといったことを繰り返し、皮膚全体が赤みを帯びます。
また口腔粘膜に白色のレース模様の病変ができる扁平苔癬があります(図2)。はっきりした原因は不明ですが、金属アレルギーが原因の可能性があり、口腔内の金属を除去することで治癒したという報告もあります。
その他、口内炎舌炎顔面湿疹も歯科金属が原因になっていることがあります。

歯科金属でアレルギーになりやすいものとしては、ニッケル、クロム、パラジウム、亜鉛、コバルト、水銀などがあります。アレルギーと思われる何らかの症状があるようでしたら、皮膚科などで、疑いのある材料を皮膚に貼って反応を調べるパッチテストという検査を受け、もし歯科金属が原因であれば直ちに除去することをお勧めします。自費診療にはなりますが、歯科金属をセラミックやジルコニアなど金属を使用しない方法で治療することができます(メタルフリー治療2017年10月コラム)。金属アレルギーが心配な方はぜひご検討下さい。


図1 歯科金属アレルギーが原因と思われる掌蹠膿疱症


図2 白いレース状の粘膜が特徴的な扁平苔癬.多数歯にわたり歯科金属を使用していたため、セラミックに交換した

監修者情報
監修情報

森田 誠(もりた まこと) 山手通り歯科 院長

東北大学卒業後、仙台市内の歯科医院に勤務。その後、新宿区の元日本接着歯学会副会長が在籍する歯科医院で8年間勤務。その間、鶴見大学歯学部歯科補綴学第二講座に所属し学位(歯学博士)を取得。
日本歯科審美学会、日本顎咬合学会、日本補綴歯科学会、日本接着歯科学会、日本歯科保存学会に所属し、なるべく歯を残し、美しさを追求することに精進する。その結果、数多くの著書を手掛け、長きの臨床と研究により接着性・審美性に優れた「接着修復治療」を実践。現在、中目黒で開業し日々精度の高い治療を行っている。
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