歯周病による歯の動揺を改善させるには?
2013.9.26
歯が動揺する原因はいくつかありますが、最も大きな原因の一つに歯周病があります。歯周病が進行すると歯を支えている歯槽骨の支持が減少し、歯の動揺が次第に大きくなります(図1)。
その他、歯が動揺する原因としては外傷や歯ぎしりなどがあります。
歯周病による歯の動揺を改善させるには、まず歯周組織の炎症を取り除く必要があります。そのためには初期治療として、歯みがき指導によるプラークコントロールと歯石除去を行います。
図1のように部分的に歯槽骨の支持が少ない場合は、咬合時の早期接触が考えられますので咬合調整をします。また歯の動揺が著しい場合は歯周治療に先立って、動揺歯の安静を保つために隣在歯と暫間的に歯を固定する必要があります。
暫間固定の方法は動揺歯と隣在歯の隣接面の汚れを除去してからリン酸で歯面処理を行い、固定用の樹脂で接着固定をします(図2~図4)。歯周治療が一通り終わって動揺が改善しているようでしたら固定を除去しますが、歯周病の場合は歯槽骨の支持が劇的に増えることはないので、動揺の状況をみて永久固定をします。
固定する歯に虫歯のない前歯では舌側面にワイヤーを沿わせて接着する方法(図5)がありますが、奥歯のように咬む力が非常に強い部位では固定が外れないよう、クラウン(被せ物)で数歯を連結(連結クラウン)して永久固定をすることもあります。
図1 歯周病による歯槽骨の支持が減少している症例(レントゲン)
図2 術前.下顎側切歯が動揺しているため固定を行う
図3 隣接面を清掃後、リン酸で歯面処理をする
図4 接着性の樹脂で暫間固定
図5 下顎前歯舌側にワイヤーを沿わせて永久固定した症例(レントゲン)

森田 誠(もりた まこと) 山手通り歯科 院長
東北大学卒業後、仙台市内の歯科医院に勤務。その後、新宿区の元日本接着歯学会副会長が在籍する歯科医院で8年間勤務。その間、鶴見大学歯学部歯科補綴学第二講座に所属し学位(歯学博士)を取得。
日本歯科審美学会、日本顎咬合学会、日本補綴歯科学会、日本接着歯科学会、日本歯科保存学会に所属し、なるべく歯を残し、美しさを追求することに精進する。その結果、数多くの著書を手掛け、長きの臨床と研究により接着性・審美性に優れた「接着修復治療」を実践。現在、中目黒で開業し日々精度の高い治療を行っている。
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