歯の表面にひびが入っていても大丈夫?

歯の表面にひびが入っていても大丈夫?

コラム

2013.6.4

歯は、外側からエナメル質、象牙質、そして中心部に歯髄(神経)という構造をとっています。表面のエナメル質は非常に硬いですが脆い性質があり、加齢によってひびが入ることがよくあります(図1)。ひびがエナメル質の範囲内であれば問題は起きませんので、特に気にする必要はありません。

しかし、ごく稀に内部の象牙質にまで深くひびが入り、そこから歯髄に細菌感染を起こすことがあります(図2)。この時は歯がしみたり、強い痛みが発現したりします。原因は強い歯ぎしり食いしばり、あるいは不良充填物であると考えられます。感染した歯髄は腐敗の原因になるため、穴を開けて感染歯髄を除去し、内部を消毒(根管治療)しなければなりません(図3)。ただしこれはひびが歯冠部で留まっている場合です。

ひびが歯根にまで及んでいる場合は、細菌がひびを伝って骨に感染し、レントゲンでは黒い影となって現れます(図4・矢印)。この場合は内部を消毒(根管治療)してもひびを伝って再び細菌が歯根部に侵入するため、破折した歯根を保存することは困難で、通常は抜去しなければなりません。図4のように歯根が2本あるときは破折していない歯根は保存し、隣接歯と連結してブリッジにする方法がよく用いられます。

加齢によるエナメル質のひび.よくある現象なので問題ない
図1 加齢によるエナメル質のひび.よくある現象なので問題ない

ひびが象牙質にまで及ぶと歯髄に細菌が感染し、強い痛みが発現
図2 ひびが象牙質にまで及ぶと歯髄に細菌が感染し、強い痛みが発現する

感染した歯髄(神経)は除去し、根管内の消毒もしくは破折歯根を抜去する必要がある
図3 感染した歯髄(神経)は除去し、根管内の消毒もしくは破折歯根を抜去する必要がある

破折した歯根は、レントゲンでは黒い影となって現れる
図4 破折した歯根は、レントゲンでは黒い影となって現れる(矢印)

監修者情報
監修情報

森田 誠(もりた まこと) 山手通り歯科 院長

東北大学卒業後、仙台市内の歯科医院に勤務。その後、新宿区の元日本接着歯学会副会長が在籍する歯科医院で8年間勤務。その間、鶴見大学歯学部歯科補綴学第二講座に所属し学位(歯学博士)を取得。
日本歯科審美学会、日本顎咬合学会、日本補綴歯科学会、日本接着歯科学会、日本歯科保存学会に所属し、なるべく歯を残し、美しさを追求することに精進する。その結果、数多くの著書を手掛け、長きの臨床と研究により接着性・審美性に優れた「接着修復治療」を実践。現在、中目黒で開業し日々精度の高い治療を行っている。
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