歯の痛みを感じる場所を錯覚することはある?
2015.7.26
歯の痛みを主訴として来院される患者様は多く、治療するにあたってはその原因を正確に診断することが重要となります。歯痛の原因は歯髄疾患(歯の神経の病変)と歯周疾患(歯肉や歯槽骨、根尖部の病変)に起因するものが99%を占めており、残り1%が歯や歯周組織以外に起因していると言われています。
歯の痛みを脳に伝達するのは三叉神経と呼ばれる脳神経で、脳から3本に大きく枝分かれして顔面部の感覚を支配しています(図1)。
歯の痛みを伝達する際に痛みの場所を錯覚することが時々ありますが、これを歯痛錯誤(関連痛)といいます。三叉神経の末端から伝達される痛みの情報が脳に近づくにつれて1本の神経になるため、どこの末端から情報が伝達されているのか分からなくなることがあります。
歯痛錯誤は前歯よりも奥歯で起こりやすく、隣の歯と錯覚したり、時には上下の歯を間違えたりすることがあります。しかし三叉神経は左右1対になっており顔面部の感覚は左右別々に支配されているので、左右で痛みを錯覚することは絶対にありません。
また歯痛錯誤は、歯周疾患や根尖病変よりも知覚過敏や大きな虫歯による痛み(歯髄炎)で起きやすいと言われています。
歯科医は患者様がおっしゃる痛みの場所や種類についても参考にしますが、それだけで判断せず視診やレントゲンの所見など、あらゆる情報を整理して痛みの部位と原因を診断しています。
図1 【三叉神経の走行】上から眼神経、上顎神経、下顎神経と3つの大きな枝に分かれている

森田 誠(もりた まこと) 山手通り歯科 院長
東北大学卒業後、仙台市内の歯科医院に勤務。その後、新宿区の元日本接着歯学会副会長が在籍する歯科医院で8年間勤務。その間、鶴見大学歯学部歯科補綴学第二講座に所属し学位(歯学博士)を取得。
日本歯科審美学会、日本顎咬合学会、日本補綴歯科学会、日本接着歯科学会、日本歯科保存学会に所属し、なるべく歯を残し、美しさを追求することに精進する。その結果、数多くの著書を手掛け、長きの臨床と研究により接着性・審美性に優れた「接着修復治療」を実践。現在、中目黒で開業し日々精度の高い治療を行っている。
院長紹介ページはこちら