歯のかみ合わせ部分に凹みができるのは虫歯のせい?
2010.5.19
図1、図2のように、奥歯や前歯のかみ合わせ部分に小さな凹みが出来ることがありますが(矢印)、これは虫歯が原因で凹んでいるのではなく、歯の表面と内部での構造の違いによって引き起こされる現象です。
歯は、食事の際に上と下の歯がかみ合うことで、少しずつですが年々すり減っていきます。これにより歯の表面にあるエナメル質が磨耗してなくなると、内部にある象牙質が露出してきます(図3)。この象牙質はエナメル質よりも少し軟らかく磨耗しやすいため、象牙質が先に大きくすり減ることでクレーター状に凹んでしまうのです。
歯が少しずつ磨耗していくのは加齢現象ですので、歳とともにこのような凹みができるのは全く問題ありません。ただし、若年者で既に象牙質が露出している場合は、歯ぎしりが疑われます。またエナメル質よりも硬い素材のかぶせ物が装着されている場合においても、対合している歯の磨耗が大きくなります。このような歯の急速な磨耗によって象牙質が露出している場合は、知覚過敏の症状が出やすいため、食事で歯をかみ合わせるたびに痛みを感じることがあります。もし日常生活に支障をきたしているのであれば、たとえ虫歯でなくても治療の必要があります。治療方法は原因に応じた対処が必要ですので、歯科医師によくご相談ください。
図1 奥歯にできた凹み(矢印)
図2 前歯にできた凹み(矢印)
図3 エナメル質よりも軟らかい象牙質が露出すると磨耗が早いため凹んでしまう(矢印)

森田 誠(もりた まこと) 山手通り歯科 院長
東北大学卒業後、仙台市内の歯科医院に勤務。その後、新宿区の元日本接着歯学会副会長が在籍する歯科医院で8年間勤務。その間、鶴見大学歯学部歯科補綴学第二講座に所属し学位(歯学博士)を取得。
日本歯科審美学会、日本顎咬合学会、日本補綴歯科学会、日本接着歯科学会、日本歯科保存学会に所属し、なるべく歯を残し、美しさを追求することに精進する。その結果、数多くの著書を手掛け、長きの臨床と研究により接着性・審美性に優れた「接着修復治療」を実践。現在、中目黒で開業し日々精度の高い治療を行っている。
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