歯ぎしりが強い人の歯はどうなっている?
2018.10.25
歯は人間の体の中で最も硬い組織です。そして、その歯で私たちは日々食事をすることができます。
その硬い歯でも、毎日咬み合わせることで少しずつですが歯は摩耗していきます。これを咬耗と呼びます。歯が萌出して間もない10代の頃は、歯の咬耗はほとんど目立ちませんが(図1)、高齢になるにつれて咬耗が大きくなり、歯の凹凸が少なくなります(図2)。これは加齢現象ですので特に問題はありません。
ところが、歯ぎしりをする習慣がある人は比較的若い年齢であるにもかかわらず歯の咬耗が著しいことがあります(図3)。歯ぎしりは睡眠中に無意識にしていますが、その咬合力は覚醒時よりも強いと言われています。歯ぎしりが毎晩のように繰り返されれば、若い年齢でも咬耗が大きくなっていくことがご理解いただけると思います。
歯ぎしりはストレスとか不良な咬み合わせが原因と言われていますが、はっきりとした原因はまだ分かっていません。したがって歯ぎしり自体を止めることは基本的には不可能です。しかし、歯ぎしりによる歯の咬耗を防ぐことはできます。ナイトガードと呼ばれる歯を保護するマウスピースを作って就寝時に装着すれば、ナイトガードが摩耗することで歯の咬耗は抑制されます(図4)。このナイトガードは、歯ぎしりの音を消す効果もあります。
図1 17歳の奥歯の形態.歯の咬耗はほとんどない
図2 64歳の奥歯の形態.咬耗は大きくなり、歯の凹凸は少なく平坦になっている
図3 歯ぎしりにより臼歯が著しく咬耗している症例.
咬合面のエナメル質が少なくなり、黄色い象牙質が露出している
図4 歯ぎしりから歯を守るナイトガード.ナイトガードが摩耗することで歯の咬耗を抑制している

森田 誠(もりた まこと) 山手通り歯科 院長
東北大学卒業後、仙台市内の歯科医院に勤務。その後、新宿区の元日本接着歯学会副会長が在籍する歯科医院で8年間勤務。その間、鶴見大学歯学部歯科補綴学第二講座に所属し学位(歯学博士)を取得。
日本歯科審美学会、日本顎咬合学会、日本補綴歯科学会、日本接着歯科学会、日本歯科保存学会に所属し、なるべく歯を残し、美しさを追求することに精進する。その結果、数多くの著書を手掛け、長きの臨床と研究により接着性・審美性に優れた「接着修復治療」を実践。現在、中目黒で開業し日々精度の高い治療を行っている。
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