歯ぎしりが強い人にクサビ状欠損はなぜ起きる?
2019.6.25
前回のコラム(2019年5月コラム) では、歯ぎしりや食いしばりが強い人の歯の根元(歯頸部)にクサビ状欠損ができやすいことを述べました(図1)。今回はこのクサビ状欠損ができるメカニズムについて説明したいと思います。
昔はこのクサビ状欠損は、歯ブラシで歯を強く擦り過ぎることが原因で起きるとされていました。しかしこれが原因だとすると、歯頸部に限局的できれいなクサビ状欠損ができることは考えにくく、また図1のように歯ブラシの当たりにくい内側に引っ込んだ歯にクサビ状欠損ができて、それよりも外側にある犬歯にクサビ状欠損ができていないことは説明がつきません。
歯ぎしりが強い人の歯には歯槽骨頂部を支点として歯頸部に圧縮や引張の応力が繰り返しかかります(図2矢印)。これにより歯頸部の歯質が少しずつ崩壊して次第にクサビ状欠損として目に見えるようになります。こうなると歯頸部の象牙質が露出して歯がしみたり、歯垢(プラーク)が停滞しやすくなって虫歯になることがあります。
クサビ状欠損がこれ以上ひどくならないようにするには、歯に水平方向の強い力がかからないように咬み合わせの調整をするか、またはナイトガード(2018年3月コラム参照)を就寝時に装着するなどして歯にかかる力をコントロールする必要があります。
図1 歯頸部にできたクサビ状欠損
図2 歯に水平方向の強い力がかかると歯頸部に応力がかかり、歯質が少しずつ崩壊していく

森田 誠(もりた まこと) 山手通り歯科 院長
東北大学卒業後、仙台市内の歯科医院に勤務。その後、新宿区の元日本接着歯学会副会長が在籍する歯科医院で8年間勤務。その間、鶴見大学歯学部歯科補綴学第二講座に所属し学位(歯学博士)を取得。
日本歯科審美学会、日本顎咬合学会、日本補綴歯科学会、日本接着歯科学会、日本歯科保存学会に所属し、なるべく歯を残し、美しさを追求することに精進する。その結果、数多くの著書を手掛け、長きの臨床と研究により接着性・審美性に優れた「接着修復治療」を実践。現在、中目黒で開業し日々精度の高い治療を行っている。
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