根管治療をしても治らない場合はどうする?
2020.11.25
レントゲンで歯根の先端(根尖)に黒い影(透過像)が写っている場合(図1a,図2a)、根管内部が細菌感染しているため、根管の清掃と消毒が必要になります(感染根管治療)。
根管治療が成功すれば根尖部のレントゲン透過像は縮小し、やがて消失します(図2b)。3ヶ月位で病変の縮小は確認できるので治癒しつつあるかどうかの診断ができます。
しかし十分な根管治療をしたにもかかわらず病変が縮小しない場合は、歯根嚢胞になっている可能性があります(2011年2月コラム)。この場合は根尖部の嚢胞を外科的に摘出しなければなりません。図1bのように根尖部付近の歯肉を切開しそこから嚢胞を摘出しますが、嚢胞の取り残しがないように歯根の先端も切除します(歯根端切除術・図1c )。これで数か月から1年経過をみて病変が消失すれば治癒したと診断できます(図1d)。
小さな病変でも歯根嚢胞になっていて根管治療だけでは治らないものや、逆に非常に大きな根尖病変でも根管治療のみで治癒するケースもあるので(図2)、どちらにしても長期的に経過をみていくことは重要です。
図1a 上顎側切歯の根尖病変.
根尖部にレントゲン透過像(黒い影)が見られる
図2a 下顎中切歯の根尖病変.
かなり大きいレントゲン透過像
図1b 根管治療後1年経過しても病変の縮小がなく、
歯根端切除と嚢胞摘出を行った
図2b 根管治療のみで
1年後に病変が消失し治癒した
図1c 歯根端切除および
嚢胞摘出後のレントゲン写真
図1d 1年後病変が
消失し治癒した

森田 誠(もりた まこと) 山手通り歯科 院長
東北大学卒業後、仙台市内の歯科医院に勤務。その後、新宿区の元日本接着歯学会副会長が在籍する歯科医院で8年間勤務。その間、鶴見大学歯学部歯科補綴学第二講座に所属し学位(歯学博士)を取得。
日本歯科審美学会、日本顎咬合学会、日本補綴歯科学会、日本接着歯科学会、日本歯科保存学会に所属し、なるべく歯を残し、美しさを追求することに精進する。その結果、数多くの著書を手掛け、長きの臨床と研究により接着性・審美性に優れた「接着修復治療」を実践。現在、中目黒で開業し日々精度の高い治療を行っている。
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