斜めに生えた親知らずを放置するとどうなる?
2018.7.27
前歯から数えて8番目の親知らず(智歯)は、斜めに生えてきたり、生えずに歯肉の中に埋もれたり(埋伏智歯)することが少なくありません。これは現代人の顎の大きさが小さく、親知らずが出てくるスペースが足りないために起こります。
図1のように親知らずが斜めに生えてきた場合、一つ前(7番:第2大臼歯)の歯との間に深い隙間が生じます。この隙間は歯ブラシがうまく届かないため常に不潔な状態になり、歯肉が腫れたり虫歯になったりします。
斜めに生えた親知らずは、放置して虫歯になったら抜歯をすればそれで終わりですが、一つ前の第2大臼歯まで虫歯になってしまうことも多く(図2)、場合によっては歯の神経(歯髄)を取るほどの大きな処置が必要になることがあります。
親知らずを抜歯すると、頬が大きく腫れてかなり痛むといったイメージがあると思いますが、完全に歯肉内に埋伏しているのでなければ(埋伏智歯)、頬が腫れることはむしろ少なく痛みも薬を服用すれば問題ない程度のことがほとんどですので、それほど心配はいりません。
もしあなたに斜めに生えた親知らずがあるのなら症状の無いうちから歯科医と相談して、大事な第2大臼歯を守るために親知らずを抜歯するかどうかを判断した方がいいと思います。
図1 親知らず(智歯)が斜めに生えている症例。歯と歯の間に汚れが溜まりやすい
図2a レントゲン所見。隙間の深い部分は歯ブラシが届かない
図2b 数年放置したために手前の第2大臼歯歯が大きな虫歯になってしまった(矢印)

森田 誠(もりた まこと) 山手通り歯科 院長
東北大学卒業後、仙台市内の歯科医院に勤務。その後、新宿区の元日本接着歯学会副会長が在籍する歯科医院で8年間勤務。その間、鶴見大学歯学部歯科補綴学第二講座に所属し学位(歯学博士)を取得。
日本歯科審美学会、日本顎咬合学会、日本補綴歯科学会、日本接着歯科学会、日本歯科保存学会に所属し、なるべく歯を残し、美しさを追求することに精進する。その結果、数多くの著書を手掛け、長きの臨床と研究により接着性・審美性に優れた「接着修復治療」を実践。現在、中目黒で開業し日々精度の高い治療を行っている。
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