差し歯の根元の変色を改善させる治療方法は?
2022.10.28
前歯にセラミックを入れたのに、歯肉が痩せて根元から変色した歯質が露出して見た目が気になるというお問い合わせが多くあります。経年的に歯肉が痩せることは加齢減少の一つなのでやむを得ない場合がありますが、歯肉が痩せてもセラミックがきれいに見えるようにしたいものです。
そもそもセラミックを入れた歯の根元が茶色く見える原因は、神経の無い歯が茶色く変色しやすいことにあります(2007年11月コラム参照)。さらに神経を取った歯に補強としてメタルコアが入っていると、より一層色調が暗く見えます(図1)。
一般的な治療方法としては、歯の根元まで完全に覆えば変色が隠れるため歯質の変色を残したままセラミックを装着することがほとんどです。しかし歯の変色は歯根部にまで及んでいることが多いため、歯をセラミックで完全に覆っても歯肉が暗く見えることがあります。また経年的に歯肉が痩せてしまい変色した歯質が露出することも否めません。
そこで当院では変色した歯に対して、可能であれば他の医院ではほとんど行っていない歯根の漂白処置という、きれいに見せるための下地作りをしてからセラミックを装着するようにしています。
治療の流れは、セラミッククラウンと内部のコア材を全て除去し、内部の歯質に特殊な処理をしてから漂白剤を填入します(図2~4)。漂白後、歯に近い色調と物性のファイバーポストコアを接着し形態修正後(図5)、歯型を採得してセラミッククラウンを作製します。完成したセラミッククラウンを試適して色と形態に問題なければ専用の接着材でセラミックを装着して完了です(図6)。このようにクラウン内部の目立たない部分にもこだわることによって、長期にクラウンの美しさが保てるように心掛けています。
歯の漂白は変色の度合いによっては2~3回かかりますが、後々のことを考えれば多少通院回数が多くなってもやった方が良いと思います。ただし歯質の残存量によっては漂白が出来ないケースもありますので、気になる方は受診していただければと思います。
図1 歯頸部の変色の典型例
メタルコアがあると変色がより強くなる
図2 術前
右上中切歯の差し歯の根元に変色が見られる
図3 セラミックとコア除去後
歯質が茶色く変色している
図4 漂白後
歯根部まで漂白すると歯肉が明るくなりやすい
図5 コア接着後
歯に近い色調のファイバーポストコアを接着
図6 術後
術前と比較して歯肉の色も改善している

森田 誠(もりた まこと) 山手通り歯科 院長
東北大学卒業後、仙台市内の歯科医院に勤務。その後、新宿区の元日本接着歯学会副会長が在籍する歯科医院で8年間勤務。その間、鶴見大学歯学部歯科補綴学第二講座に所属し学位(歯学博士)を取得。
日本歯科審美学会、日本顎咬合学会、日本補綴歯科学会、日本接着歯科学会、日本歯科保存学会に所属し、なるべく歯を残し、美しさを追求することに精進する。その結果、数多くの著書を手掛け、長きの臨床と研究により接着性・審美性に優れた「接着修復治療」を実践。現在、中目黒で開業し日々精度の高い治療を行っている。
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