修復治療をした歯が虫歯にならないためには何が大事?

修復治療をした歯が虫歯にならないためには何が大事?

コラム

2020.8.26

成人の虫歯治療の多くは、修復治療をした歯から虫歯が再発する二次う蝕の治療です。
通常、詰め物(インレー)や被せ物(クラウン)などの修復物は、セメントと呼ばれる接着剤で歯と接着させます。歯に強い力がかからなければ弱い接着剤でも剥がれることはありませんが、歯は食物を食べるために存在しているので繰り返し強い力がかかります。これにより接着剤が剥がれて隙間ができてしまい(辺縁漏洩)、内部に細菌が入り込み虫歯が進行するケースが少なくありません(図1)。したがって修復した歯が虫歯にならないようにするためには、過酷な口腔内の環境においても歯と修復物が接着剤でしっかりと接着していることが非常に重要だと考えています。

そこで私は過去の実験において、修復した歯に繰り返し大きな力がかかっても接着が剥がれない接着剤の種類と歯面処理法を調べる目的で、同じ規格に形成した抜去歯にクラウンを数種類の接着剤でそれぞれ接着させ、30kgの力で10万回繰り返し荷重をかけました(図2)。そしてクラウン内部に生じた辺縁漏洩の面積を比較し、どの接着法が最も接着耐久性が高く辺縁漏洩を抑制できるかを調べました(図3)。
図4は保険治療で一般的に用いられている接着剤で(図3のFL)、クラウン内面に漏洩が起きていることが分かります。
図5は10万回の繰り返し荷重をかけても漏洩がほとんど起きなかった接着剤と歯面処理法です(図3のAD)。
当院ではセラミックによる審美治療には、すべてこの耐久性の高い接着剤と歯面処理法(図3のAD)を使用しております。
できるだけ虫歯を再発させたくない、セラミック治療で見た目をよりきれいにしたい方は、カウンセリングも行っておりますので、中目黒にお越しの際は気軽にお問い合わせください。

図1
図1 クラウンの二次う蝕
咬み合っているところに黒い印をつけた。咬み合っている場所に近いところから辺縁漏洩が起き、虫歯になっている。

図2
図2 辺縁漏洩を調べる実験
クラウンに30kg、10万回の繰り返し荷重をかけ、接着方法による辺縁漏洩の違いを調べた。

図3
図3 生じた辺縁漏洩の面積のグラフ
一番右のADが最も辺縁漏洩が起きにくく、当院ではすべてのセラミック治療にこの接着剤を用いている。

図4
図4 辺縁漏洩を起こした接着剤の例
図3のFL.クラウン内面が赤く染まっている部位が辺縁漏洩の起きている場所。歯と接着剤が剥がれ隙間ができている。(写真左)

図5
図5 辺縁漏洩を起こさなかった接着剤の例
図3のAD.クラウン内面に漏洩はなく、しっかりと接着している。(写真左)

監修者情報
監修情報

森田 誠(もりた まこと) 山手通り歯科 院長

東北大学卒業後、仙台市内の歯科医院に勤務。その後、新宿区の元日本接着歯学会副会長が在籍する歯科医院で8年間勤務。その間、鶴見大学歯学部歯科補綴学第二講座に所属し学位(歯学博士)を取得。
日本歯科審美学会、日本顎咬合学会、日本補綴歯科学会、日本接着歯科学会、日本歯科保存学会に所属し、なるべく歯を残し、美しさを追求することに精進する。その結果、数多くの著書を手掛け、長きの臨床と研究により接着性・審美性に優れた「接着修復治療」を実践。現在、中目黒で開業し日々精度の高い治療を行っている。
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