セラミッククラウンの美しさを長期に保つ治療方法は?
2016.12.27
歯の根元まですべて覆う被せ物をクラウン(冠)と呼びます。
中でもセラミッククラウンは歯と同色にすることができるので見た目がとてもきれいになります。
しかし使用する材質や治療方法、また加齢に伴うお口の環境の変化によっては、長期経過で見た目が悪くなる場合があります。個人差はありますが歯肉は加齢に伴い少しずつ痩せていく傾向にあります。
セラミッククラウンでも内部にメタルフレームが入っているものを使用したり辺縁の接合部に隙間ができたりすると、図1のように歯肉が痩せた時に辺縁部の変色が目立ち、見た目がとても悪くなることがあります。
このようなことが起きないようセラミッククラウンを装着後長期間経過しても、歯との接合部が目立たないような治療方法を選択する必要があります。
図1はメタルフレーム入りのセラミッククラウン(メタルボンド)の症例ですが、10年以上経過して歯肉が痩せ、辺縁の接合部が露出して黒く目立っていました。
クラウンを除去すると(図2)、虫歯による変色と、歯の神経(歯髄)がない時によく起きる変色がみられました。
セラミックで全部被せて見えなくなるからといって歯質が変色したままでよい訳ではなく、見えない部分の下地作りが大事です。
この症例では歯を漂白して(図3)、できるだけ健全な歯の色に近づけてから、歯と同色のコア(ファイバーポストコア)で歯の土台を築造し(図4)、メタルフレームの無いオールセラミッククラウンを装着することで辺縁の接合部の色が馴染み、見た目が自然になりました(図5)。
このようにクラウン内部の目立たない部分もこだわることによって、長期にクラウンの美しさを保つことができます。
図1 術前 歯肉が痩せてクラウン辺縁部の黒変が目立っている
図2 クラウン除去後 内部の歯質に虫歯と変色が見られる
図3 歯の漂白処置後 歯を漂白し健全歯質に近い色調に改善させた
図4 コア築造、支台歯形成後 歯と同色のファイバーポストコアを接着
図5 術後 オールセラミッククラウンを接着、接合部の色が馴染んでいる

森田 誠(もりた まこと) 山手通り歯科 院長
東北大学卒業後、仙台市内の歯科医院に勤務。その後、新宿区の元日本接着歯学会副会長が在籍する歯科医院で8年間勤務。その間、鶴見大学歯学部歯科補綴学第二講座に所属し学位(歯学博士)を取得。
日本歯科審美学会、日本顎咬合学会、日本補綴歯科学会、日本接着歯科学会、日本歯科保存学会に所属し、なるべく歯を残し、美しさを追求することに精進する。その結果、数多くの著書を手掛け、長きの臨床と研究により接着性・審美性に優れた「接着修復治療」を実践。現在、中目黒で開業し日々精度の高い治療を行っている。
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