虫歯が原因で歯の神経(歯髄)が感染し腐敗することがありますが、それ以外の原因でも歯髄に細菌感染を引き起こすことがあります。今回は歯髄感染を引き起こすその他の原因について紹介したいと思います。
一つ目は重度の歯周病によるもので、歯周ポケットが歯根の先端部(根尖)に達し歯槽骨が喪失すると(図1)、根尖部から細菌が歯髄に感染し(図2矢印)自発痛や咬合痛などの症状が発現します。これを上向性感染といいます。この現象が起きてしまうと虫歯がなくても歯の表面に穴を開けて、感染した歯髄を除去し歯の内部を消毒しなければなりません(根管治療:2018年6月コラム)。
二つ目はクサビ状欠損によるもので、これは歯ぎしりや食いしばりが強い人の歯頸部(歯と歯肉の境目)によく起きる現象ですが、稀にこの欠損が非常に大きくなることがあり(図3)、そこから歯髄に感染することがあります(図4矢印)。クサビ状欠損が起きるメカニズムについては新たなコラムで説明したいと思います。
歯髄に感染した初期の段階では、まだ歯髄が生きているので冷水痛や温熱痛などの症状があり、その後自発痛が発現します。さらに歯髄が壊死し腐敗してくると咬合痛が発現し、歯が茶色に変色することもあります。
図1 局所的に歯周病が進行し根尖部まで歯槽骨が喪失している(黒変部)
図2 歯周ポケットから細菌が侵入し、根尖部から歯髄に感染する(矢印)
図3 歯頸部にできた大きなクサビ状欠損
図4 クサビ状欠損が大きくなると歯髄に細菌感染しやすくなる(矢印)