前癌病変とは、正常組織よりも癌を発生しやすい形態学的に変化した組織のことをいいます。
口腔内の前癌病変の一つに白板症があります。
白板症とは口腔粘膜に生じた、摩擦によって除去できない白色の板状あるいは斑状の角化病変で、40歳以上の男性の舌や歯肉、頬粘膜に好発すると言われています。白板症の原因は明らかにされていませんが、誘因として局所に持続的に作用する物理的・化学的刺激、例えばタバコや刺激性食品、不適合のかぶせ物や入れ歯、などが挙げられます。
診断は病変部の組織を採取して顕微鏡による検査が必要です。正常な上皮細胞に比べて異型性があり不規則な配列を示すようになります。
白板症の癌化率は5~10%とされており、癌化の特徴として以下のものが挙げられます。
・白斑が急激に拡大したとき
・病巣中にイボ状ないし乳頭状の腫瘤ができたとき
・比較的平滑の局面に凹凸不正ができたとき
・病変の境界が不明瞭になったとき
白板症の治療方法は刺激の原因の除去のほかに、レーザーによる蒸散や外科的切除が一般的です。
口腔内の白色病変は他にもあります。カンジダ症は、真菌(カビの一種)が口腔内で増殖する病気で、ガーゼで拭き取ることができるので、白板症との区別ができます。また頬粘膜を咬んで粘膜が白くなることがありますが、一時的なものなのですぐに治ります。
もし、口腔内に白色の病変ができてなかなか消えない場合は、歯科や口腔外科を受診してみてください。
図1 口蓋歯肉にできた白板症の一例 骨が隆起しているため、食事のたびに機械的な刺激を受け発症したと思われる